第1種換気と第3種換気は、住宅の換気方法としてよく使われます。第1種換気は、機械の力で給気して、機械の力で排気する方法です。一方、第3種換気は、自然の力で給気して、機械の力で排気する方法です。大きな違いは、室内へどのようにして空気を取り込んでいるかという点です。第3種換気は自然給気なので、家のどこかに少し隙間が空いていて、そこから空気を取り込んでいます。排気は換気扇などの機械の力で行います。一方、第1種換気は排気に加えて、給気も機械の力で行っています。建物の1ヵ所から空気が取り入れられ、熱交換器を通って室内の各空間へ機械の力で空気が送られます。熱交換器とは室内外の空気に含まれている熱を回収する機械です。第1種換気は、第3種換気に比べて計画的で効率が良さそうですが、初期費用やメンテナンスコストが高くなる傾向があります123.
□1種換気と3種換気の比較(平均的な広さの住宅を仮定)
仮定:住宅延床120㎡(10m*6m、高さ5m)、外皮平均熱貫流率Ua値0.5W/㎡K→6面の面積計は(30+50+60)*2=280㎡、容積は300㎥
仮定:外部と室内の温度差10℃(10K)(外10℃、内20℃)
→基準法で、必要換気回数は0.5回/hなので、300㎥*0.5回/h=150㎥/h
→6面から伝導で出入りする熱は、0.5W/㎡K*280㎡*10K=1400W/h(600Wのこたつ2台分、100Wの人14人分相当)
:3種換気(対流)で出入りする熱は、0.35W/㎥K*150㎥/h*10K=525W/h ※0.35W/㎥K:空気が運べる熱量の定数
よって、3種換気で、1400W/h+525W/h=1925W/hの熱量の出入りがある。(600Wのこたつ3台分)
:1種換気(熱交換率80%仮定)(対流)で出入りする熱は、525W/hの20%になるので、105W/h
よって、1種換気で、1400W/h+105W/h=1505W/hの熱量の出入りがある。(3種換気の78%に削減)
□冬の平均気温7.9℃(1月、2月、3月、11月、12月)150日
:3種換気で冬1時間に出ていく熱は、0.35W/㎥K*150㎥/h*(20-7.9)K=635W/h ※室内温度を20℃と設定
:1種換気で冬1時間に出ていく熱は、0.35W/㎥K*150㎥/h*(20-7.9)K*((100-80)/100)=127W/h ※差は、80%の508Wh
よって、1種換気にすると、508Whの熱を節約できる。冬の150日計算で、508Wh*24h*150日=1829KW
冬エアコンの実行燃費をCOP3、電気代を28円/KWhと仮定すると、1829KW/3*28円/KWh=17071円節約(冬の150日間で)
□夏の平均気温25.9℃(7月、8月、9月)90日(以下の計算は、顕熱だけで、水分含む潜熱は含んでいない)
:3種換気で夏1時間に侵入する熱は、0.35W/㎥K*150㎥/h*(25.9-24)K=100W/h ※室内温度を24℃と設定
:1種換気で夏1時間に侵入する熱は、0.35W/㎥K*150㎥/h*(25.9-24)K*((100-80)/100)=20W/h ※差は、80%の80Wh
よって、1種換気にすると、80Whの熱の侵入を抑えられる。夏の90日計算で、80Wh*24h*90日=172KW
夏エアコンの実行燃費をCOP5、電気代を28円/KWhと仮定すると、172KW/5*28円/KWh=963円節約(夏の90日間で)
□電気代は、夏・冬で17071+963≒18000円/年の節約できる。
□電気代は、1種換気の消費電力は39W、3種換気の消費電力は1W*3台=3Wで、消費電力差は36W
:差36W*24h*(150日+90日)=207KWで、207KW*28円/KWh=5796円/年ほど電気代は3種のほうが安い。
電気代は、消費電力を含めても3種より1種のほうが18000-5796≒12000円/年の節約。
□工事費は、1種換気のダクト工事差額≒40万(ダクトレスで≒30万)※システムによってかなりの開きがある。
償却するのに40万円/12000円=33年を要す。※電気代が上がれば償却年数は短くなる。
また、性能劣化でカタログ値の70%になると仮定すると償却年数は67年となる。
□メンテナンスは、5年、15年、25年に5000円(フィルター交換)、10年、20年で50000円(熱交換素子、ファン交換)も考慮
□1種換気(全館空調)にすれば、熱効率が良いので、消費電力を含めても12000円/年の節約になるが、工事費増の40万の償却には35年程度かかる上に、将来のメンテナンス代がかかると予測される。しかし、節約するのが第一目的であろうか。調湿された快適な健康住宅に過ごせるとなれば、金銭に換えがたい。あまり家にいなくて、個別空調で良い場合は、3種換気で十分。家にいる時間が長い場合や、高齢者が居て、各部屋の温度差を極力無くしたい場合は1種換気が良い。また、これは、外皮平均熱貫流率Ua値0.5W/㎡K(HEAT20,G1クラス)を仮定した計算で、まずは、断熱性能をG1クラスUa値0.5W/㎡K(等級4は0.87W/㎡K)まで上げることのほうが先と言える。
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